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ホーム > 【過去ログ】極細木スガ子のきっぱり言うわよ! > 第9話

過去ログ

※第10話以降は期間限定公開中!!

9きっぱり目
「ボクの中にある柔らかい部分」

2007年2月22日 ナレーターメルマガ4号より転載

「売れるかどうかは誰にもわからない難しいこと。でも今のあなたは問題をわざとまぜごぜにして、言い逃れしてるんだわ」



それは、衝撃の一夜だった。
声業界の女帝と呼ばれる伝説の女マネージャー「極細木(ごくぼそき)スガ子」に、業界の現状を教わった私は、帰りのタクシーの中「既存のナレーター教育」の問題点や、新人がぶつかる壁について考えさせられることになった。結局教われなかった「3つ目の壁」とはなんなのか…?


極細木(ごくぼそき)によれば、私たち新人の悩みのほとんどは「プレイヤーがひとりひとりが自立していくこと」で解決されることになる。
将来が見えず「いつまでもこのまま」を感じてしまうレッスンも、自分自身のために変わらなければならないのに事務所や養成所のために言うことをきかねばならない状況も、全部、誰かにぶらさがっているからだ。
「3つ目の壁」がなんであれ、答えは分かっているつもりだ。自立…。

『自立が必要なことはわかった。でもいったい、“どうすれば”?』


自立とは、自分の意志と力で前に踏み出していくことだ。だが正直いえば私は、あまりに自分に【自信】がなかった。
養成所に通っても通っても、一向に【見いだしてもらえなかった】事実が「本当は才能なんかないんじゃないか」という不安を、確実なものにしていく。

そういえば過去数度だけあったチャンスを、わざと見逃したこともあった。今思えば怖かったのかもしれない。自分を試す場で、わざわざ他人に、自分の才能がなさを教えてもらうのはとても嫌だった。でも夢を諦めるのはもっといやだ。

ん…夢?夢ってなんだっけ?
そういえばぼんやりとしていて、はっきりと想い描いたことがなかった…私はどういう“私”になりたかったのか…。私は、タクシーの窓の向こうの空に自分の心を映しだし、自分自身に問いかける。

黒い霧のような、イメージの世界で極細木が私に言う。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
『逃げるのネ。ま、別にワタクシは困らないけど』

「逃げません。ボクに才能はなかったという結論を受け入れる事にしたんです。」
『才能のあるなしなんて、他人が決めればいいことヨ』
「【プレイヤーの自立】は、ボクには理想的すぎて、手が届かないんです。だから誰かに頼るしかないのに、依存心が悲劇を生むというなら…早目に諦めるのが正しいってそう気づいたんです。身分不相応というか…とにかく【自信】がないんです。だってぼくには…“ぼく”がない!」


『やりきってもないのに、なぜそれがわかるの?』
「ははは、”ぼく”がないのに、なにをやりきれるというんです?」

『描いてもない“ぼく”には、なれる訳がないでしょう?』
「売れるナレーターになりたいとは願っていますよ。でも“ぼく”がないから、売れることができないんです。悪循環ですよ』

『売れてる人は全員最初から売れてたの?違うでしょう?』
「売れる部分を、誰かに見いだしてもらったんだと思います。売れることで“自分”ができていったんだ。」
『違う。“自分”で“自分を”作っていたから、自分を売ることができたんだと思うワ。依存心と戦いなさい』
「充分戦いましたよ、養成所にあちこち通ってレッスン頑張って。でも売れませんでしたから。なら“ダメな自分”じゃないですか。売れないはずだ」
『「きちんと売った」こともないのに、わかったような事を言うわネ。結局売れるかどうかは誰にもわからないし難しいことだワ。でも今のあなたは、いくつかの問題をわざとまぜごぜにして、言い逃れしてるんだワ』
「そうかもしれません。でも仕方ないじゃないですか、そもそも全部ダメなんですよボクは」
『あなたがナレーターになりたいという思いすら、封印したいというならそうした方がいいわネ。ワタクシには関係ないし。』

「【自信】がないんです!」
『文字通り信じればいいのよ、自分で』
「先生なら信じてくれますか」
『ワタクシはいつも、伸びようとするプレイヤーを信じています。』
「ダメだったんですよこれまでのボクは。それでも?」
『過去がダメであれどうであれ、あなたがナレーターになりたいと本当に思えば、また違ったものが出てくるでしょうね』
「ナレーターになりたい!」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
そうか…私は、ナレーターになりたかった。それだけで、それだけで良かったのだ!

極細木という『環境』が私に自問自答をさせ、変化を怖がる本当の理由、「【自信】のなさ」を見つけ出してくれた。これが3つ目の壁の正体だったのだろうか?
だが私はもう恐れない。極細木という『環境』が一つの【答え】を導き、自立への一歩を踏み出させてくれたのだ。


明けない夜はない。
そう、あの極細木との長い夜は明け、再び会う時はお天道様の下で、きっぱりと私は“私”をアピールできるだろう。


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