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極細木スガ子のきっぱり言うわよ!

声業界伝説のマネージャー極細木(ごくぼそき)スガ子。酸いも甘いも噛みわけたその経験で、誰も言えなかったことを、今宵も〈きっぱり〉と斬っていく。「事務所の深い落とし穴編」「堕ちたマネージャーたち編」などプロ必見の連載。


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ナレーターインタビュー小さな奇跡

この物語はトッププロたちの華やかなデビューストーリーではありません。
あなたの身近にいる、ナレーターになりたい人達がプロになっていく過程のささやかなお話。

新人ナレーターたちが初めての仕事をつなげていけた瞬間の”小さな奇跡”を綴った実録インタビューです。


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声優からナレーターへ「ヒッキー&ガンバルジャン」

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過去ログ

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ヒッキー&ガンバルジャン【#6】

ガンバル・ジャンの【ジュニア☆頑張るじゃん!】
~でもやっぱりナレーター~
第3幕『ジュニアの夜と霧の章』

2010年1月21日 ナレーターメルマガ131号より転載

「同期のAくん・・・ ”みんなで力をあわせて”って言ってたのに・・・
まさか自分だけ・・・」


この物語は、大手声優事務所に所属するナレーター「ガンバル・ ジャン」の”レ・ミゼラブル(ああ無情)”なストーリーである。
同級生のなにげない一言「声、いいネ!」の褒め言葉をきっかけに、向こう見ずにも声業界に飛び込んでしまったガンバル・ジャン。彼の生き様は、まさにパン一つを盗んだがゆえに19年もの投獄生活を送ってしまった本家「レ・ミゼラブル」のジャン・ヴァルジャ ンも真っ青な人生であった。



声業界に憧れ幾度かの遠回りをへて入った「パッポンプラ事務所」付属養成所。「噂が不信を呼ぶ身内同士のつぶしあい」など定番の洗礼をうけた後、ガンバル・ジャンは晴れて『ジュニア』に合格したのであった!!

大手プロ養成所の場合、ジュニアに上がれるのは4~7人前後。そこから本当に1軍にあがれるのが1~2人という感じでした。プロへあと一歩である夢の「ジュニア」になったはいいが、さすが大手事務所、数十人がジュニアに合格していたのだ。『ようやく養成所生レースから抜け出したのだ』という心の底からの安堵をあざ笑うかのように、再び始まる生き残りの戦いを前に、皆一様に立ち尽くしたのでした。

さて、こうして始まったジュニアという名の「生き残りレース」。すでに養成所生ではありませんので課題もありませんから、私はまだかまだかと、仕事の電話を家でひたすら待っている日々の中。

「あせっても仕方がないだろ。できることやろう」
(そういうあいつは本当にのんびりしてるのか?)

「みんなで力をあわせて所属めざそうよ」

(まさか利用されるのでは?)

「たぶん生き残れるのはキミだと想うよ」
(本気でそう思ってるというなら、今すぐ辞めて人数を減らしてくれよ!)


言っている人がなにをどう言っていたにしても、もう手遅れでした。私たちは再び「疑心暗鬼」と「嫉妬」の黒い霧に包まれはじめていたのです。

『同期のAっているだろ?やつは事務所にいったら、偶然Bマネージャーと話せたらしい。なんでか趣味があうらしくてな、ずいぶん気に入られて、名前を覚えてもらったってよ』同期ジュニアの情報通Cが、電話をくれたのでした。

「名前を憶える…って、事務所の人たちは俺達の名前も知らないというのかい?」
『おいおい泣く子も黙る大手事務所のパッポン様だぜ?所属してたって、一部の売れっ子声優以外、覚えられる人数じゃねえんだ』
「ま、待て。名前も知らずにどうやって仕事をくれるつもりなんだ」
『だからくれるくれない以前の問題なんだって!』
「言っている意味が分からないんだが…」
『よーく聞け。まずマネージャーに会うことが出来るのは現場以外にねえ。覚えられてねえから仕事は、ふられねえ。仕事がふられてねえから現場に行けねえ。現場に行けねえからマネージャーに会えねえ。マネージャーに会えねえから覚えてもらえねえ…』
『そんなシステム…!素敵すぎて、わかんねーよっ!』


愕然としました。
知らなかった…。そんなことから始めなきゃいけなかったのか…。 そして、自分の不明を恥じる気持がそうさせるのか、ふたたび心にわき上がる黒い霧。『同期のAくん…”みんなで力をあわせて”って言ってたのに…まさか自分だけ…』

このままじっとしても仕事の電話なんて鳴る訳がない。そう気付いてさっそく次の日、仕事をもらいたい一心で、用もないのに事務所に向かいました。そういえば事務所事務所とうわごとのように繰り返していた割に、私は事務所がどんな所で何をしてるのかさえ知りませんでした。

目の前に広がる、たくさんの机。書類が重なって、みな忙しく電話や電卓を操っているようです。忙しげに仕事をしている背広姿のスタッフ達。ずっとフリーターをやっていた私にとっては、思わず尻込みをしてしまう光景でした。

「こ、こんにちわ~…えへへ」
『あのさ。業界の挨拶は『おはようございます』だから。ったく…』
話しかけたデスクは、振り返ってぎらり、と目を光らせたあと、また書類に目を戻しました。手がものすごい早さでパソコンを打っていました。
「すみませんっ!えへへ…ですよね。あ、あ…お、お忙しいのですよね、すみませんっ!じゃ、失礼しまーす。えへえへへ」
自分でも嫌になるくらい惨めで卑屈だった。

オフィス全体からかもし出される「邪魔だから帰れオーラ」を全身に受け、これ以上その場に居続けることは出来ませんでした。その時は誰も私を見ていないことがラッキーでした。涙目になっていることを知られなくて済みましたから。

同時期に入って、わりと丁寧な対応をしてくれた新人スタッフも、やがて態度がどんどん横柄になっていきました。でも今にして思う と、「事務所へぶら下がりたい」という卑屈さがスタッフをそんな態度にさせていたんだと思います。

スタッフ達の横柄な態度に腹がたちました。でもそれ以上に嫌だったのは、媚びとへつらいを身にまとい、下っ端根性で作り笑いする自分でした。それでも、ずっと夢にみてきた「薔薇色のジュニア生活」を失いたくなかった。

「どんなに安くたって仕事が欲しい。現場に出たい」
その頃は、そんな想いで胸がはち切れそうでした。

次週、失意と怒りのガンバルジャンに初めての仕事が!
待て、しかして希望せよ!

(→次ページ第7話は、ガンバルジャン視点のお話です)


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