ナレーターメルマガ 〜ナレーターのための無料メールマガジンです。隔週木曜日に、ナレーション事務所ベルベットオフィスが発行しています〜

プロから初心者まで、ナレーターのためになる体験談やFAQなどを連載。
隔週木曜日にメールでお届けしています。無料です。
登録フォームへすすむ→
おすすめ連載
マ┃ネ┃ジ┃ャ┃ー┃視┃点┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛
声業界伝説のマネージャー極細木(ごくぼそき)スガ子。酸いも甘いも噛みわけたその経験で、誰も言えなかったことを、今宵も〈きっぱり〉と斬っていく。「事務所の深い落とし穴編」「堕ちたマネージャーたち編」などプロ必見の連載。
プ┃ロ┃に┃な┃る┃瞬┃間┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛
この物語はトッププロたちの華やかなデビューストーリーではありません。
あなたの身近にいる、ナレーターになりたい人達がプロになっていく過程のささやかなお話。
新人ナレーターたちが初めての仕事をつなげていけた瞬間の”小さな奇跡”を綴った実録インタビューです。
【講師陣ツイッターの一覧】
マネージャー大窓王(義村透)
- 極細木スガ子のきっぱり言うわよ!
- インタビュー「inside OUT」
~生きているナレーター~ - ナレーターへの一歩「小さな奇跡」
- マネージャーの裏側「改編の狼」
- はじめてのナレーション
「放課後ティータイム」 - 声優からのナレーション
「ヒッキー」&「ガンバルジャン」 - わらしべナレーター亀子の
「明日はどっちだ?!」

ナレーターメルマガのQRコードです。

ホーム > インタビュー「小さな奇跡」 > 第8話
第8話 ナレーターインタビュー【織田っぱ】さん
「氷の世界」
2011年5月5日 ナレーターメルマガ167号より転載

「急きょの”ピンチヒッター”なんだけど、やってみる?」
その打席で期待に応えられるか。
それがプレイヤーたちの運命を大きく左右する、シビアな瞬間でもある。
「急きょの”ピンチヒッター”なんだけど、やってみる?」
突然こう声をかけられることがある。驚くべきは、現在の売れっ子の中にも、ピンチヒッターをきっかけに突破口を開いた例が多い。その打席で期待に応えられるか。それがプレイヤーたちの運命を大きく左右する、シビアな瞬間でもある。
今春。同じようにピンチヒッターを頼まれた男がいる。ナレーター「織田ッぱ」ふざけた名前にはある種の覚悟が必要だ。若干25才。
「彼のナレーションは自由に表現を楽しんでる」と言われている。
だが自由はつかみとっていくものだ。織田ッぱはそのためににエッジに立ち続けてきた。
毎日 吹雪 吹雪 氷の世界
高校時代はいじめにあった。織田ッぱはそれから長い間「氷の世界」に住むことになった。大学では演劇専攻へすすみ「アングラ演劇の帝王」と呼ばれる俳優に師事し演劇にのめりこんだ。やがて上京し声優養成所へ。元々好きだった講師のベテラン声優に一目あうなり「キミは全身を鎧で覆い隠しているな」と看破され感銘を受けたからだ。そしそしてバイトをしながらの連日の厳しい舞台の稽古。やがて事務所預りに昇格するが、「声の仕事」は半年に一回ガヤ(声のエキストラ)があるかどうかというところ。
そこのマネージャー陣はいつもどんより暗かった。所属している先輩プレイヤーたちが集まっては「ウチの事務所はプレイヤーの面倒をみない」「仕事をもってくる力がない」といいながら辞めるでもなく、愚痴をまきちらし続けていた。そんな中、織田ッぱは次期の3年にわたる所属契約の更新を薦められた。
「”自分の好きなこと”をずっとやってきて、試し尽くしてきたんです。でも、まったく食べる所までいけなかったし、有名にもなれなかった現実です。3年後自分がどうなっているかは、先輩たちを見ればわかりましたから」
そして織田ッぱは事務所を辞める。養成所時代からつきあってきた彼女とも別れた。”やりたいこと”をやりつくした結果、自分の中が空っぽになるような感覚に見舞われた。立っている場所が消えたのだ。ただ「好きなこと」では、結果が出なかった事実だけ残して。
僕の衣装は寒さで画期的な色になり
空虚な日々。なにげなく見たバーズのホームページ。たった二文字に強く惹かれた。
「”自立”という言葉です。何かが違う、何かが足りないと過ごしていた気持が『自立したいってことだったんだ』と思いました。でも正直言って「また養成所」ってすごく抵抗があって。でも他にそんなこと言ってるスクールもありませんでしたから…ここが最後。1年間だけ集中しきってみて、それでダメなら全部諦める!と決意するまで時間がかかりました」
迷いながらのレッスン初日。織田ッぱはサングラスに上下真っ黒なスーツ「映画ブルースブラザーズ」のようないでたちで現れた。目立つためと思っていた。だがバーズ校長でありマネージャーの義村にこう言われた。
『ユー、全身ピンクになっちゃいな』
黒は”誰にも染まらない”ってメッセージ。プレイヤーは、”変化”してこそがプレーヤーだ。林家ぺー、パーさんみたいに全身ピンクになったらそれは大きなふり幅になる。
「最初は何を言ってるかわかりませんでした(笑)表現に一体なんの関係があるんだろう?と思ったのですが校長は真顔で。でも、振り返ってみればたしかに僕は”生み出すクリエイタータイプ”でありたいと思ってきました。でも、そうではなくて”変化するプレイヤータイプ”だったんですよ。入学前に『これまでずっと好きにやってダメだったんだから、他人の言うことをきかなきゃダメだ』と心に決めていたこともあるので、覚悟しました…」
そして翌週本当に全身ピンクの衣装で教室に現れた織田ッぱに、クラスメートがおもしろがって声をかけた。
「こんなことでも人は喜んでくれるのか。変化することが僕の生きる道なんだって確信した瞬間でした」
流れてゆくのは時間だけなのか涙だけなのか
春。レッスンがスタート。講師から薦められたことは片っ端から実行した。講師側もどんどん課題を与えていく。自分なりの読みを研究してやってみた。でもやってみたらすぐに自分でもダメだと気づいた。教わるままに売れっ子のコピー。ボイスサンプルもアドバイス通りに早い段階でつくってみた。だが…猪鹿蝶の武信、狩野両マネージャーの反応は「これでは売れないよ」だった。
集中していたつもりだった。だが時間は自分だけを置き去りにしていった。同期生が有名企業のCMナレーションに抜擢。さらに、まわりも次々と番組ナレーションをゲットしていく。レッスンの場だけでは講師陣に評価されても、それが仕事に結びつく訳ではなかった。現実が苦しかった。
秋。2枚目のボイスサンプル制作にとりかかる。自らに課した期限が「あと半年」に迫っていた。映像プロセミナーやCMナレーションセミナーなど、生き急ぐようにバーズのすべてを吸収した。切羽詰まった追い立てられるような感覚。早くその成果を確かめたかった。サンプルは武信&狩野マネージャーにきいてもらった。
「情熱も伝わってきているし、今回のサンプルなら、いけるかもしれない」
ついに小さなボイスオーバーの仕事の機会がきた。全力で仕事に向かう。だが結果は散々だった。「自分でなくてもかまわない。他の誰でもいいプレイをしてしまった」
小さな仕事をつなげることができなくては、大きな仕事へとは届かない。日ごとに増す焦燥感。なんとか前へ進むために、右も左も分からないまま営業も経験。しかし仕事につながることはなかった。バーズブログにアップされる「営業したら仕事がきました」の記事が、信じられなかった。なんとかしなければ。もっともっと頑張って…そうやって暗い数ヶ月。
気がつけば季節が一周していた。心に決めた1年が過ぎた。この道を諦めなければいけない。
ふとあるレッスンでの講師からの言葉を思い出した「人は人ですよ」
「単純な言葉だったんですけど。その時、ふに落ちてきたんです。ひとつひとつの講師の言葉がつながっていった感じです。それ以来、焦っている自分が馬鹿らしくなって、肩の力が抜けていったんです」
フルスイングしてこそ輝く
4月。突然、武信マネージャーから携帯が鳴った。
「この春はじまってる新番組なんだけど、ピンチヒッターとしていける?番組自体はお昼の帯で、ー回きりだけなんだけどね」準備はできていた。それは心の準備だ。バーズでは「プロとして闘うエッジ感」を教わってきたのかもしれない。
「当てにいこうとしてバント狙いで外すのが一番、格好悪い。フルスイングなら、たとえ空振りでも、観客は湧かせれるかもしれない」
そして本番を迎え、織田ッぱは振り切った。
それからの勢いは織田ッぱを中心に渦を巻いていく。他のコーナーディレクターからも声がかかった。聞けば最初のディレクターが「織田ッぱがおもしろいよ」と仲間に声をかけてくれていたのだった。それぞれの曜日ディレクターからも次々と求められ始めた。たった一回のピンチヒッターのはずが、いまや立ち上がりの番組を盛り上げる役割を担っている。
『焦って苦しんでいた頃って、「俺が自分でなんとかしなければ」って勘違いをしてたんですよ。実はそれってオレがオレがっていう独りよがりだったんです。それだけでは、まわりを巻き込んでいけないんだなって、ようやく分かり始めたばっかりなんです』
氷の世界は融け始めた。
変化のエッジに挑んだ彼は、自由になった。
そしてそれを楽しんでいた。
『氷の世界』井上陽水
窓の外ではリンゴ売り、声をからしてリンゴ売り
きっと誰かがふざけてリンゴ売りのまねをしているだけなんだろう
僕のTVは寒さで画期的な色になり
とても醜いあの娘をグッと魅力的な娘にしてすぐ消えた
今年の寒さは記録的なもの こごえてしまうよ
毎日 吹雪 吹雪 氷の世界
誰か指切りしようよ 僕と指切りしようよ
軽い嘘でもいいから今日は一日はりつめた気持ちでいたい
小指が僕にからんで動きがとれなくなれば
みんな笑ってくれるし 僕もそんなに悪い気はしないはずだよ
流れてゆくのは時間だけなのか 涙だけなのか
毎日 吹雪 吹雪 氷の世界
人を傷つけたいな 誰か傷つけたいな
だけどできない理由はやっぱりただ自分が恐いだけなんだな
そのやさしさを密かに胸に抱いてる人は
いつかノーベル賞でももらうつもりでガンバッてるんじゃないのか
ふるえているのは寒さのせいだろ 恐いんじゃないネ
毎日 吹雪 吹雪 氷の世界
【この記事に関連のあるページ】
Copyright(C)2009.velet office inc. All Right Reserved.






















